第五章 銀行は審査をしていない?

融資は実際にどこが審査しているのか知ってますか?

 住宅ローンの申込をして断られた方から、毎回同じような相談が寄せられる。

 「断られたけれど、その理由がわからない。」
 「銀行は否決になった理由を教えてくれない。」と、いうものだ。
さんざん色々な書類を揃えさせられ、長い時間待たされたあげく「今回は総合的判断により当行ではお取り扱いできません。」では、納得できない方も多いのだろう。否決になった理由を明確に説明してくれれば、こんど他の銀行へ行く時にはそれなりに行きよ
うがあるし、心構えも違うものだ。しかし、何の情報も得られず、ただ「総合的判断により・・・。」では混乱するばかりだ。数行断られでもしたら、本人は心底がっかりして「もう私には家を買うことはできなのか。」とか、 「このまま高い金利を一生払い続けなければならないのか。」と、深く落ち込んでしまう。

 銀行は本来サービス業なのだから、せめて、お客様の場合にはここが弱いので、今回は融資することができないが、ここをこのように改善すればご融資可能になりますと、お客の立場にたってアドバイスをする位の配慮があっても良いはずだ。

 毎日のように弊社にはインターネットから問い合わせが入るが、ほとんどの方がご自身で銀行に相談に行かれ断られた方ばかりだ。銀行に融資を断られ、インターネットで調べ弊社へたどり着いた訳だ。

 インターネット上には様々な情報が溢れていて、 「住宅口ーン」のキーワードで検索するとヤフーでは四百六十四万件・グーグルで四百九十一万件ものページがでてくる。しかし、銀行や関連情報サイトがほとんどで、実際の悩みの解決にはならない場合がほ
とんどだ。特にローン関係の情報サイトは、提携金融機関へお客を紹介し、紹介手数料を稼ごうとしているサイトばかりだ。銀行に断られ、どうしたらよいのか途方に暮れている方の現状を細かく分析し、どこが弱いのか、どこをどうしたら銀行が融資してくれるようになるのかを、アドバイスができるところは、ほとんどない。それもそのはず。実際に銀行と接触した経験がないので、銀行がどのように審査しているのかを知らないのだ。

 では、銀行はどのように審査しているのだろう。

 結論から先に言おう。銀行は審査をしているようで、実際には・・・

     銀行は、審査していない!。に等しい。

そんな馬鹿な!銀行が融資をするのだから、銀行が審査をしないなんて言葉信じられない!と、誰も思う。当然だ。しかし、もう一度言う。

     銀行は、審査などしていない!。

 いったいどういう事なのだろう?

 たしかにスコアリングシートと言って、融資申込者の属性(年齢・収入・勤務状況・クレジット利用歴など)について、十項目以上に渡り融資可能対象者かのチエックをほとんどの銀行は行っている。しかし最終的な審査を行っているのは、銀行では無いのだ。

 ではどこなのか?既に銀行から融資を受けている人は気付かれるだろう。あなたが銀行から融資を受ける際には、融資保証料が払わされる。銀行によりその額は異なるが、百万円単位で返済期間に応じてその保証料が設定されている。この保証料は融資申込者が何らかの理由で返済ができなくなった時に、融資申込者に代わり、融資金額を保証して支払うという制度のものだ。 一種の保険のようなもの、と考えればわかりやすいだろう。万一の事故があった時に、その損害を補償するためのものだ。

 この保証制度により、いったい誰が守られるのだろう?

あなたが融資を受けていて、返済ができなくなったときに、あなたに代わりその融資金額の返済を行う「保証」なのだから、あなたを守ってくれているようにも感じられる。
しかし、それは大きな間違いだ。あなたは何も守られていないのだ。

 守られているのは、銀行だ。

 銀行はあなたが返済できなくなっても、何も心配はいらないのだ。万一のための保険に入っているのだから、その融資金額はどちらにしろ全額返ってくる。だから融資申込人であるあなたに返済能力が本当にあるかどうか、細かく調べる必要など、初めから無
い訳だ。銀行は、審査する必要がないのだ。

 銀行としてみれば融資金額は安全なわけだから、できれば申し込み全てに融資を行いたいところだ。 (融資の数が増えれば実績があがるが、事故率の問題も評価に繋がるので、そう簡単にはいかないが・・・。)

そしてこの保証をしているのが、銀行の裏にいる銀行系列もしくは提携の保証会社だ。保証会社が保証料を受け取り、銀行へ融資金額の保証をしていることになる。この構造が理解できると、銀行が融資の審査を行っているのではなく、実際には保証を行う「保証会社」が「保証できる返済能力のある申込者」かどうかを審査してるのだとよくわかるだろう。

 ただ、融資申込者と保証会社の担当者が直接面談する訳ではないので、窓口の銀行担当者が保証会社に対してどのような説明をするのか、作文をするのか、が重要にはなってくる。

 銀行側にしてみれば、最終的には保証会社が判断するのだから、窓口として事務的に処理すれば良いと考え、申込書類を預かり保証会社に届け、保証会社の判断を申込者に伝えるだけに徹底しているところもあるようだ。信用金庫などは、断られて他の信金へ行ったとしても、同じ保証会社を利用してるので、当然回答は同じになってしまう。

 しかし、銀行を守るための保証料を、融資申込者が支払わねばならないというのは、何だか変だと思わないだろうか?しかもこの保証、銀行に保証会社が返済したからといって、あなたの返済が免除される訳ではない。返済義務者であるあなたは、今度は保証会社へ返済しなければならないのだ。

 返済できない場合は?

保証会社は強硬だ。返済できない場合は、差し押さえ。競売。換金、と続く。

そして競売換金の結果、残債が消えれば幸いだが、消えなかった場合には、あなたの家は無くなり、借金だけが残るという悲惨なことになってしまう。

 で、銀行は?

 何も失うことなく、いや失うどころか融資金額全額が戻り、何事もなかったかのように営業を続け、次の融資先を罠を張ってさがすのだ。

 

≪前のページ 目次へ ≫第五章 「まとめ」へ