第七章  銀行による大きな違い

銀行は同じではない。違いが多過ぎます。

 一度銀行へ行って断られるとほとんどの人が「もう自分はだめなんだ。」とガッカリして諦めてしまう。銀行は否決の理由も詳しく教えてくれないし、どこが悪かったのかもわからないまま、どうして良いのか途方にくれてしまうのだ。しかし一度や二度でガッカリすることは何もない。銀行(実際は保証会社)によってその審査内容は全く違うのだ。借り換えの場合の違うところを列挙してみよう。

①金利
②期間(返済残年数に対して)と期間延長の可否
③年収による返済バランス
④返済バランス計算時の金利
⑤収入合算の場合の年収の評価
⑥職種の評価
⑦その他の借入の評価
⑧離婚時の名義変更の可否
⑨完済年齢
⑩担保評価倍率
⑪優遇金利とその適用方法
⑫返済履歴の期間…等々

ざっと見てもこれだけある。だからガッカリすることは何もない。白分の要望に合っている銀行を上手くセレクトすれば良いのだ。列挙したものを少し詳しく見てみよう。

① 金利

 これは明白だ。いまさら言うまでも無いだろう。ただ注意しなければならないのば後で出てくる優遇金利との関係だ。店頭金利が幾ら低くても、優遇金利を適用した後の実行金利が最終的に低くなければ全く意味がない。 

②期間(返済残年数に対して)と期間延長の可否

 返済額を低くしたい場合、期間延長ができるとそれだけで返済額は低くなる。総支払額は利息の額が増えるので多くはなるが、毎月の負担は楽になる。しかし通常現在の住宅ローンの残年数に含わせる銀行が多い。反面、借り換え時点から最長三十五年間まで延長をしてくれるところもある。

③年収による返済バランス

 返済比率ともいう。一般に年収五百万円以上で三十五%五百万円未満の場合三十%とされているが年収の二十五%しかみないところもある。注意しなければならないのは住宅ローン以外の借入金や力ード。これ等の年間返済額も加算されてしまうこと。昔と違い信用情報が発達したので隠しても必ずばれるもの。借入金五十万円で月間一万円の返済と計算するので、二百万円の借入があるとそれだけで年間四十八万円が年間返済額から引かれてしまう。年収4百万円の人の場合そのままでは三十%で年間百二十万円の枠があるが、四十八万円が引かれれば、残りは七十二万円となり年収二百四十万円の人と同じ返済可能額となってしまう。ちなみにこの場合月六万円の返済額が限界となってしまう。

④返済バランス計算時の金利

 返済バランス計算時には、自分が利用しようとしている金利は銀行は計算に使わない。基準金利と呼んで十年固定の金利を使う。しかし自分が選択した金利を計算に使ってくれる銀行もある。この場合当然低い金利で計算してくれた方が返済バランスは取れてくる。銀行により、二%も違う場合があるので注意。

⑤収入合算の場合の年収の評価

 年収が不足している場合に配偶者の収入を合算できるが、配偶者の勤務形態によりその年収を百%でみるのか、五十%で見るのかが違う。一般にパート・アルバイトは、五十%しか見ないが、銀行により百%見てくれるところもある。親子の揚合、合算せずに親の年齢が六十五歳を超えていれば相統時精算課税という手もあるが。住宅ローンの窓口担当者でありながら知らない銀行もあるので注意。

⑥勤務と職種の評価

 職種による評価は銀行によりまちまち。公務員を始めとして上場企業勤務.医師弁護士など士業が強いのはどこでも同じだが、営業職ドライバー・保険外務員などの歩合給の比率が高い職種は一般に評価が低い。この場合収入が高くても不安定と見られるのだ。勤務年数も三年以上とする場合が一般的だが一年で可とするところもある。また一年以内でも場合により認めるところもあるし、認めさせる方法もある。派遣社員は数年前までどこでもだめだったが、今は数行認めてくれている。

⑦その他の借入の評価

 返済バランスのところで述べたがその他の借入についてバランスだけでなく借入先も評価の対象になる。消費者金融いわゆるサラ金系については使っているだけでダメという銀行もあれば、完済すればオーケーという銀行もある。これについてはテレビで宣伝しているように銀行自体が系列にサラ金会社を持っているので疑問の点も多いと思うが、余裕があれば完済しておくに越したことはない。完済証明を忘れずに取ろう。

⑧離婚時の名義変更の可否

 離婚の多いこの頃。離婚に伴って家と住宅ローンをどうするかが問題となる。慰謝料のつもりで配偶者へ家を渡す場合、名義を簡単に変えてしまう人もいるが、本来これはしてはならないこと。何故なら銀行は債務者の担保として抵当権をつけているが、債権者である銀行の知らないうちに担保物件の名義が変わってしまうことになる。担保物件の名義変更と同時に住宅ローンの支払も配偲者への変更を希望する入も多い。これは債務の移行と言って銀行は基本的に了承しないケースが多い。但し、離婚に伴う書類が完備した場合認めるところも例外的にあるので、あきらめることも無い。

⑨完済年齢

 従来は七十歳もしくは七十五歳が一般的で七十歳までを利用する人が多かったが、平成十六年頃からハ十歳までを認めるようになってきた。ごれは期間延長の際に関係してくる。三十五年マイナス経過年数もしくは八十歳マイナス年齢の低い方まで延長できる。

⑩担保評価倍率

 不動産担保融資の場合、担保物件の担保価値評価は評価額の七十~八十%が一般的であった。住宅ローンの借り換えについても従来は同様、それが百%を認めるようになったが、借り換えが始まった当初は担保不足で借り換えができないケースが多々あった。しかし担保評価二百%が登場し、都市銀行等現在では三百%もあるので担保不足を心配する必要はほとんどない。

⑪優遇金利とその適用方法

 借り換え顧客の争奪含戦の結果平成十六年秋ごろから短期間だけでなく全期間対応の優遇金利が登場した。当初0・七%程度であったものが一%になり現在では一・五%全期間優遇まで出てきているので驚きである。しかし、店頭金利の水準が銀行ごとに異なっているので、優遇適用後の実質金利を比較しないと一概に優遇幅が大きいからといって飛びつくと損をすることにもなるので注意。短期間優遇では一・七~二%引きもるがその優遇幅に引かれると、その後0・三~0・四%になるので、トータル的にどうなのかをチエックすることを忘れてはならない。

⑫返済履歴の期間

 以前は返済履歴をチエックすることなどなかった。平成十六年ごろからだが、融資に当たり担保評価だけでなく個人の信用度を重んじるようになったため、住宅ローンの過去の返済履歴がチエックされる。返済を行っている銀行の通帳のコピーの提出を求められる。基本的に一回でも遅れの記録があると借り換えはできない。何らかの説明のつく理由があれば大丈夫の場合もあるが、きちんと返済してくれる人が否かの評価を銀行は通帳チエックで行っている。その履歴の期間は一年間であるが、少数だが半年でオーケーの銀行もある。注意しなけれぱならないのはご自身では遅れは無いと思っているが、実際には遅れとしてマークされてしまうケース。引き落とし日に落ちなくて、数日後返済をした場合、本人は返済をしているので遅れていないと思っているが、銀行ではしっかり遅れとして見る。銀行では引き落とし日に落ちなければ、全て遅れなのだ。

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