第八章 銀行交渉を自分でやると

銀行交渉は自分でやると損します。

 銀行のことを良く理解できていない。わかっていない。これにつきる。私が十五年間に亘り銀行と交渉をして得たノウハウの一部をこの本で公開してはいるが、実際には読者の背景により個々に銀行の選択も違うし、交渉方法も違う。銀行によっての違いを前
章でも述べたがざっと十二頂目。これらを組み合わせ総合的に判断し、ベストの銀行を選ぶことは至難の業だ。実際にはここに述べた以外にもまだまだたくさんある。読者が自分で銀行交渉をした場合、損する確率が高い。さてどうするべきか。

欧米ではすでにこのような問題の対処法として専門の職種が存在する。モーゲージ・ブローカーと呼ばれる人々だ。彼らは依頼者の要望に沿って住宅口ーンを選択する。米国では住宅口ーン利用者の実に75%が利用しているとするデータもある。しかし日本ではこと住宅口ーンに関しては遅れている。銀行自体がこれまで述べたように統一性のないバラバラの対応の上に、何百種類と言う住宅ローン商品が登場した現代となっては専門家の登場も必然だ。この状況を見据えて国士交通省の指導のもと平成十八年四月には(財)住宅金融普及協会で住宅ローンアドバイザーの認定を始めた。当然私も第一期生として資格を取得したが、正直言って実務では何の役にも立たない。何故なら住宅ローンの仕組みや制度についての知識は学ぶが、銀行交渉の実務については学ぶところは無いからだ。個々に触れた銀行の実態は学べない。金融機関や住宅販売会社の営業の窓口の知識として役立つ程度のものだ。

 金融機関や住宅販売会社のサイドに立ってしまうと、お客の側の視点がなくなってしまう。融資さえできればよい。住宅の販売さえできればよい。という売上至上主義になってしまうからだ。

 重要なのは顧客の立場に立って、真に有利な条件で住宅ローンを組むことができるかではないのか。最近住宅ローンの審査に落ちた顧客(住宅ローン困難者と命名しているが、少し失礼な呼び名だ。)を対象として、銀行以外の住宅ローン(住宅ローン専門金融機関や証券会社など)を紹介するところも出てきたようだ。しかしこれは正に日本 版サブプライムローンであり、将来の住宅ローン破たん者を生み出す元凶となるだろう。住宅ローンは借りられれば良いという単純なものではなく、各々の家庭のライフプランに合ったものでなければならない。住宅ローンは家計の負担率として少なくとも30%以下であるべきで、売れればよいからと4%5%のローンを利用させる住宅販売会社の話には決して乗ってはならない。顧客にとって将来負担となり、危険を伴うなら住宅ローンは組むべきでないのだ。無理を勧めるようなことはしてはならない。今ダメなら将来に向けて着実な準備をすればいのだ。

 私は、ここに書いた経験を前提に、あくまでも一番有利な条件を顧客のために獲得すすることを大前提としてモーゲージ・エージエント(住宅ローン交渉代理人)を名乗っている。モーゲージ・ブローカー(仲介者)は日本にもいるが、真に顧客側に立ってアドバイスし銀行交渉を行うエージエントは私が初めてだと自負している。

 毎日全国から様々な相談が持ち込まれる。現在インターネットのホームページからの間合せの対応のみで営業を行っているが、相談の内容は大別すると次のようなものだ。

①銀行へ自分で行って断られた。総合的判断と言われたが本当の理由がわからない。

②転職して勤務年数が少ない。

③収入が減った。

④その他の借入がある。

⑤離婚したので、名義と債務者を変更したい。

⑥両親が退職したので引き継ぎたい。

⑦他人に貸している自宅をなんとかしたい。

そして最も多いのが、⑧支払が苦しいので楽にしたい。

実際に銀行を選択し交渉に入る前に、およその話を伺うと、私は直感的にできるかできないかがその場で判断できる。経験とは恐ろしいものだ。十五年間もこの道一筋に生きていると、幾度も同じようなケースにぶつかる。できるかできないか。どこを調整すれば良いのか。どの銀行へ持ち込めば良いのか、がいつの間にかわかるようになってきた。

 読者が住宅ローンを抱えていて、この本を読んだなら試しにご自身で銀行へ行かれるのも良いだろう。しかしマイホームの住宅ローンは一生涯で最大の買い物。万一悩まれることや困ったことがあったなら、ぜひ躊躇せずモーゲージ・エージエント(住宅ローン交渉代理入)の私に問い合わせて欲しい。他で解決できない読者の悩みの解決に、少なくとも誰より私の経験が役に立つだろう。

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